近年、日本の伝統的な文化が見直される中で、神社での結婚式、いわゆる「神前式」を選ぶカップルが増えています。厳かな雰囲気の中で行われる神前式は、ホテルやチャペルでの結婚式とは異なる独特の緊張感と魅力があります。しかし、招待された友人ゲストにとって、一番の悩みどころとなるのが「服装」ではないでしょうか。「神聖な場所だから着物でなければならないのか」「ドレスでも良いのか」「どのようなマナーがあるのか」など、疑問は尽きません。
神社結婚式は、神様の前で結婚を誓う儀式であり、一般的な結婚式以上にマナーや格式が重んじられる傾向にあります。そのため、知らずにマナー違反をしてしまうと、新郎新婦に恥をかかせてしまう可能性もあります。そこで本記事では、神社結婚式に友人が参列する際の服装について、基本的なマナーから具体的な選び方、季節ごとの注意点までを徹底的に調査し、解説します。これから参列を予定している方は、ぜひ参考にしてください。
神社結婚式に友人が参列する際の服装マナーとは？
神社という神聖な場所で行われる結婚式において、友人が参列する際に最も重要視すべきなのは「清潔感」と「露出の抑制」です。神道には「穢れ（けがれ）」を避けるという考え方があり、肌の露出が多い服装や派手すぎる装飾は好まれません。ここでは、洋装と和装それぞれの選び方や、絶対に避けるべきNG項目について詳しく解説します。
洋装（ドレス・スーツ）の選び方
神社結婚式において、友人は必ずしも和装である必要はありません。洋装で参列すること自体は全く問題なく、むしろ最近では多くの友人がドレスやスーツで参列しています。ただし、チャペルウェディングのような華やかさを重視するよりも、上品さや清楚さを意識したコーディネートが求められます。
女性の場合、昼間の結婚式であれば「セミアフタヌーンドレス」、夕方以降であれば「セミイブニングドレス」などの準礼装（セミフォーマル）が基本となります。色はネイビー、ベージュ、パステルカラーなど、落ち着いた色味や柔らかい色味が好まれます。デザインは、肩や背中が大きく開いたものは避け、袖のあるものを選ぶか、ノースリーブの場合はジャケットやボレロを羽織って肌を隠すのが鉄則です。スカート丈は、膝が隠れる程度の長さが望ましく、座ったときに膝上が見えすぎないよう注意が必要です。
男性の場合は、ブラックスーツやダークスーツ（濃紺やチャコールグレー）が基本です。ビジネススーツでも構いませんが、光沢感の強すぎるものや、カジュアルすぎるデザインは避けるべきです。シャツは白が基本で、襟の形はレギュラーカラーやワイドカラーなどのスタンダードなものが適しています。
和装（着物）の選び方
神社というロケーションに合わせて和装で参列することは、新郎新婦からも喜ばれることが多く、式の雰囲気をより一層華やかにします。しかし、着物には「格」が存在するため、友人の立場にふさわしい種類を選ぶ必要があります。
未婚女性の場合、第一礼装である「振袖」を着用することができます。振袖は非常に華やかで、お祝いの席にぴったりです。ただし、新婦が「引き振袖」や「本振袖」を着る場合、色が被らないように事前に確認しておくと親切です。また、振袖は未婚女性の特権ですが、年齢的に少し落ち着きたいと考える場合や既婚女性の場合は、「訪問着」や「付け下げ」、「色無地（一つ紋以上）」を選ぶのがマナーです。訪問着は絵羽模様が入っており華やかさがあるため、結婚式には最適です。
男性の場合、和装で参列するケースは女性に比べて少ないですが、紋付羽織袴が正礼装となります。ただし、新郎よりも格が高くならないよう注意が必要です。一般的には、友人の立場で男性が着物を着ることはハードルが高いため、無理をせずスーツを選ぶのが無難とも言えますが、着物を着る場合は呉服店などで相談し、適切な格のものを選びましょう。
避けるべきNGな服装
神社結婚式では、神域に入るという意識を持つことが大切です。そのため、以下のような服装はマナー違反となり、厳に慎むべきです。
まず、花嫁の色である「白一色」のドレスや着物は絶対にNGです。これは洋式の結婚式と同様のルールです。また、全身「黒一色」のコーディネートも、喪服を連想させるため避けるべきです。黒いドレスを着る場合は、羽織りものやバッグ、アクセサリーで華やかさをプラスしましょう。
次に、殺生を連想させるアイテムは神道の考えに反するため厳禁です。具体的には、ファー（毛皮）、革製品、アニマル柄（ヒョウ柄やゼブラ柄など）が該当します。たとえフェイクファーであっても、見た目が毛皮であれば避けた方が賢明です。冬場の防寒具としてファーコートを着ていく場合でも、神社の敷地内に入る前や、クロークに預ける段階で脱ぐ必要があります。
さらに、露出過多な服装もNGです。ミニスカート、胸元が大きく開いたドレス、深いスリットが入ったスカートなどは、神前式の厳粛な雰囲気にはそぐいません。また、ラメやスパンコールが過剰に使われたギラギラと輝く素材も、昼間の式では避けるのがマナーです。
足元やバッグなどの小物に関するマナー
服装だけでなく、小物類にも細かいマナーが存在します。まず足元ですが、神社は砂利道や石段が多いのが特徴です。そのため、ピンヒールのような極端に細いヒールは歩きにくく、怪我をする恐れもあるため避けた方が良いでしょう。太めのヒールや、安定感のあるパンプスが推奨されます。
重要な点として、神社結婚式では靴を脱いで社殿に上がるケースが多くあります。その際、素足は絶対にNGです。必ず肌色のストッキングを着用しましょう。カラータイツや黒ストッキング、網タイツはカジュアルに見えたり、不祝儀を連想させたりするため避けるのが無難です。また、つま先が出るオープントゥの靴や、ミュール、ブーツなどは「つま先（妻）が先に出る＝お別れ」を連想させる、あるいはカジュアルすぎるという理由で結婚式には不向きです。
バッグについては、小ぶりのパーティーバッグが基本です。大きな荷物はクロークに預け、会場内には必要最低限のものだけを持ち込みます。素材は布製がベストで、やはり革製品やファー素材は避けます。サブバッグを持つ場合も、紙袋ではなく、フォーマル用の布製サブバッグを用意しましょう。
神社結婚式における友人の服装選びで注意すべきポイント
基本的なマナーを押さえた上で、さらに細かな注意点や、季節ごとの対策について深掘りしていきます。神社結婚式ならではの「参進の儀（花嫁行列）」への参加や、空調設備が整っていない場合があることなど、環境面を考慮した服装選びが、当日を快適に過ごすための鍵となります。
男性友人の服装マナーと注意点
男性友人の場合、スーツの着こなしにおいて「清潔感」と「礼儀」が何よりも重要です。ネクタイは、白やシルバーグレーが最も正式ですが、最近では淡いパステルカラーや、控えめな柄物でも許容される傾向にあります。ただし、黒いネクタイは喪服になるため絶対に避けてください。また、蝶ネクタイやアスコットタイも、格式高い神社ではカジュアルに見えることがあるため、一般的な結び下げのネクタイが無難です。
足元は、紐付きの黒い革靴（ストレートチップやプレーントゥ）を選びます。ローファーやスリッポンはカジュアルなアイテムですので避けましょう。靴下は、座敷に上がることを想定し、ふくらはぎまで隠れる長さの黒無地を選びます。くるぶし丈のソックスや、白、柄物の靴下は、靴を脱いだ際に非常に目立ち、マナー違反となります。穴が開いていないか事前にチェックすることも忘れてはいけません。
ポケットチーフを挿すと、一気にフォーマル感が増し、お祝いの席にふさわしい華やかさを演出できます。リネン（麻）やシルク（絹）素材の白やシルバーのチーフを、スリーピークスやTVフォールドで挿すのがおすすめです。
女性友人の服装マナーと注意点
女性友人が特に注意すべきは、ヘアメイクとアクセサリーです。神社の厳かな雰囲気に合わせ、派手すぎる盛り髪や、奇抜なカラーリングは控えます。清潔感のあるアップスタイルやハーフアップが好まれます。長い髪を下ろしたままにするのは、お辞儀をする際に髪が垂れて見苦しくなることがあるため、まとめるのがマナーです。
アクセサリーに関しては、昼間の式では光りすぎないパールや、サンゴ、翡翠などが適しています。ダイヤモンドやクリスタルなどの強く輝く宝石は、夜のパーティー向けとされているため、昼間の神前式では控えめにするか、小ぶりのものを選びます。揺れるタイプのイヤリングやピアスは「家庭が安定しない」という意味に取られることもあるため、固定タイプを選ぶとより丁寧です。
また、着席時に膝頭が見えない丈のスカートを選ぶことは前述しましたが、神社では正座をする可能性もゼロではありません。タイトすぎるスカートは座りにくく、シワになりやすいため、フレアスカートやプリーツスカートなど、ある程度ゆとりのあるデザインの方が動きやすく、立ち居振る舞いも美しく見えます。
季節（夏・冬）ごとの対策と服装
神社は、ホテルや専門式場と異なり、屋外を移動する時間が長く、社殿自体も古い建築様式のため空調が十分でない場合があります。そのため、季節に合わせた対策が必須です。
夏の神社結婚式は、暑さとの戦いになります。しかし、暑いからといってノースリーブで肌を露出したり、素足になったりするのは厳禁です。吸湿速乾性のあるインナーを活用したり、通気性の良い素材のドレスを選んだりして工夫しましょう。汗拭き用のハンカチや、扇子（式の最中は使用を控える）を持参すると便利です。また、日傘は移動中には使えますが、写真撮影や行列の際には邪魔になることもあるため、折りたたみ式のコンパクトなものが推奨されます。
冬の神社結婚式は、底冷えする寒さが予想されます。社殿の中は暖房が効きにくいことが多いため、見えない部分での防寒対策が重要です。カイロを貼る、保温性の高いインナーを着るなどの工夫をしましょう。コートやマフラーなどの防寒具は、神社の鳥居をくぐる前、あるいは手水舎を使う前には脱ぐのが礼儀とされていますが、待ち時間や屋外での移動中は着用していても問題ない場合が多いです。ただし、式の最中（社殿内）ではコートを着たまま参列することはマナー違反となりますので、ジャケットや厚手のショールなど、室内でも着用可能な羽織りもので調整するようにします。
神社結婚式の服装で友人が失敗しないためのまとめ
神社結婚式の友人の服装についてのまとめ
今回は神社結婚式の友人の服装についてお伝えしました。以下に、今回の内容を要約します。
・神社結婚式は神聖な儀式であり格式を重んじる場である
・友人の服装は準礼装（セミフォーマル）が基本となる
・洋装の場合は露出を控えた上品なドレスやスーツを選ぶ
・和装の場合は訪問着や付け下げや振袖などが適切である
・花嫁と被る白一色の服装は避ける必要がある
・殺生を連想させるアニマル柄や毛皮は厳禁である
・素足はマナー違反でありストッキングの着用が必須である
・つま先が出るオープントゥの靴は避けるべきである
・男性の服装はブラックスーツやダークスーツが一般的である
・男性は白やシルバーのネクタイ着用が基本とされる
・冬場の防寒着は参拝や儀式の前には脱ぐのが礼儀である
・夏場でもノースリーブなどの過度な露出は控える
・参進の儀では砂利道を歩くため歩きやすい靴が望ましい
・派手すぎるアクセサリーやメイクは場の雰囲気に合わない
・靴を脱ぐ場面を想定し靴下やストッキングの状態を確認する
神社での結婚式は、日本の伝統を感じられる素晴らしい機会です。
マナーを守った服装で参列することで、新郎新婦への祝福の気持ちがより伝わることでしょう。
事前の準備をしっかりと行い、心に残る素敵な一日をお過ごしください。
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