50代で貯金や老後資金に不安を感じたとき、最初にすることは、周囲の貯蓄額と比べたり、すぐに投資を始めたりすることではありません。
まず、現在の収入と支出、手元にあるお金、借入れと返済、近い将来に必要な支出を整理します。そのうえで、支出の見直し、今後の収入、必要に応じた相談先という順番で考えると、自分の家計で優先すべきことが見えやすくなります。
「50代だからもう遅い」と決めつけるのではなく、今の状況に合う一歩を選ぶことが大切です。
「貯金なし」でも状況は世帯ごとに異なる
ひと口に「貯金なし」といっても、状況は同じではありません。
- 日常の支払いや借入れの返済がすでに難しい
- 毎月の生活は維持できているが、急な支出に備えるお金が少ない
- 当面の生活費はあるが、老後に向けた資金を準備できていない
日常の支払いや返済が難しい場合は、投資や老後資金づくりより、生活と返済について相談することを優先します。当面の生活を維持できている場合は、家計を整理したうえで、支出と今後の収入を見直します。
「金融資産非保有」は預金残高ゼロとは限らない
J-FLECの「家計の金融行動に関する世論調査」では、「金融資産」に、日常の出し入れや引落しに備えている預貯金を含めていません。そのため、調査上の「金融資産非保有」と、銀行口座や手元のお金まで完全にゼロであることは同じ意味ではありません。
2025年調査では、世帯主が50歳代の二人以上世帯1,024世帯について、金融資産保有額の中央値は700万円、金融資産非保有は18.2%でした。ただし、これは調査独自の定義による集計です。自分の家計の合格ラインや、用意すべき目標額として使う数字ではありません。
最初に家計の現在地を整理する
家計を見直すときは、次の項目を一度に確認できる形にします。
- 毎月の手取り収入
- 住居費、保険料、通信費、サブスクリプションなどの固定的な支出
- 食費や日用品費など月によって変わる支出
- 預貯金など現在使えるお金
- 借入残高、毎月の返済額、返済予定
- 近い将来に予定している大きな支出
- 公的年金の加入記録と見込額
金額を並べる目的は、自分を責めることではありません。「毎月の収支に問題があるのか」「返済の負担が大きいのか」「将来用の資金をこれから準備する段階なのか」を分けるためです。
夫婦の家計であれば、どちらか一方だけが把握するのではなく、現在地を共通の数字で確認できるようにします。
50代の私が実際に見直したこと
私自身も50代になってから、老後のお金や家計について以前より考えるようになりました。
実際に見直したのは、保険とサブスクリプションです。
また、支出を減らすことだけでなく、定年後の収入をどうするかという視点も持つようになり、副業を始めました。
支出は一律に削らず、契約ごとに確かめる
支出を確認するときは、固定費と変動費に分けると整理しやすくなります。
固定費では、保険、通信サービス、サブスクリプションなどについて、現在の契約内容、利用状況、家計への負担を確認します。特に保険は、金額だけでなく必要な保障まで減らさないよう、内容を確認したうえで判断します。
変動費は、何に使ったかを振り返り、生活に必要な支出と調整できる支出を分けます。特定の項目を一律に削るのではなく、自分の家計で継続できる見直しを選びます。
住宅費や教育費、介護費などの負担も、世帯によって状況が違います。「50代夫婦ならこの費用が多いはず」と決めつけず、実際の支出をもとに考えます。
支出だけでなく、今後の収入も考える
支出を見直しても、今後の生活や老後資金に不足が見込まれる場合は、収入面も確認します。
現在の仕事をいつまで続ける予定か、定年後にどのような働き方を考えるか、副業を選択肢にするかは、人によって異なります。副業や転職で得られる金額を一律に見込まず、自分の働き方や生活に合うかを検討します。
公的年金については、ねんきんネットや年金事務所で、自分の加入記録と見込額を確認できます。60歳以降も厚生年金に加入して働く場合は加入期間が年金額の計算に反映されますが、働き方や在職老齢年金の条件も関係します。
NISAやiDeCoは家計を整理してから検討する
NISAやiDeCoは、貯金が少ない人が必ず始めるべき制度ではありません。
NISAで利用する株式や投資信託には元本割れのおそれがあります。iDeCoは任意の私的年金で税制上の措置がありますが、原則として60歳まで資産を引き出せず、受取額は運用成績によって変わります。
まず、日常の支払いと返済、近い将来に必要なお金を確認します。そのうえで、当面使う予定のない資金があり、制度の条件とリスクを理解できる場合に検討します。
「50代なら株式を何割」と年齢だけで決めるのではなく、お金を使う時期や、価格が下がった場合に生活へ影響しないかを確認する必要があります。
自分たちだけで整理しにくいときの相談先
相談内容によって、利用する窓口が異なります。
家計や資産形成を整理したい場合
J-FLECでは、家計管理やNISA・iDeCoなどについて、無料の電話・対面・オンライン相談を案内しています。
借入れの返済が難しい場合
金融庁は、多重債務について財務局、法テラス、弁護士会、司法書士会などの相談先を案内しています。返済が難しいときは、新たな借入れや投資で解決しようとせず、早めに状況に合う窓口へ相談します。
年金記録や見込額を確認したい場合
日本年金機構のねんきんネットや、年金事務所などの相談窓口を利用できます。繰下げ受給や国民年金の任意加入は、年齢、加入記録、働き方などによって扱いが異なるため、自分の記録をもとに確認します。
まとめ
50代夫婦で貯金や老後資金に不安があるときは、次の順番で整理します。
- 日常の支払いと返済に問題がないか確認する
- 収入、支出、資産、負債、今後の大きな支出を整理する
- 保険やサブスクリプションなど、現在の契約を見直す
- 定年後を含む今後の収入を考える
- 必要に応じて、家計、債務、年金それぞれの相談先を利用する
- 投資制度は、生活に必要なお金と条件・リスクを確認してから検討する
周囲の貯蓄額や一律の目標額だけで判断する必要はありません。まず自分たちの家計の現在地を把握し、優先度の高い項目から一つずつ確認していきましょう。
参考情報
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」:https://www.j-flec.go.jp/data/kakekin_2025/
- 金融庁「資産形成の基本」:https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/invest/index.html
- 金融庁「NISAを知る」:https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/know/
- iDeCo公式サイト「iDeCoの特徴」:https://www.ideco-koushiki.jp/guide/
- 金融経済教育推進機構(J-FLEC)「中堅社会人向け 将来に向けて知っておきたいお金の話」:https://www.j-flec.go.jp/movie/training1-2/
- 金融庁「多重債務についての相談窓口」:https://www.fsa.go.jp/soudan/index.html
- 日本年金機構「60歳以降も引き続き勤めます。勤めていても年金は受けられますか。」:https://www.nenkin.go.jp/section/faq/jukyu/seido/rourei/rourei-kousei/zenpan/20140421-09.html
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」:https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html
- 日本年金機構「あと少しで年金を受け取れる方へ(国民年金任意加入のご案内)」:https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/voluntary_coverage.html

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